資源のない日本、将来のエネルギーの姿に関するシンポジウム
in 大阪


「日本の安全、経済発展に向けたエネルギーのベストミックス」
 原子力発電所の稼働停止や輸入燃料への依存で、綱渡りの状態が続く日本のエネルギー問題について考える「資源のない日本、将来のエネルギーの姿に関するシンポジウムin 大阪」(経済産業省・資源エネルギー庁主催)が11月4日、大阪科学技術センター(大阪市西区)で開かれた。専門家らによるパネルディスカッションや基調講演が行われ、約300人が参加した。

開催報告


日時 平成27年11月4日(水)
13:00~15:30(開場12:15)
会場 大阪科学技術センター8階大ホール
大阪市西区 靱本町 うつぼほんまち 1-8-4
プログラム
(1)開会あいさつ
  星野 剛士氏
    星野 剛士氏
星野 剛士氏 経済産業大臣政務官
 エネルギーは、経済産業の発展、国民生活の安定を図るための基礎です。
それが今、われわれには、解決しなくてはならない問題が山積しています。
一連の施策を進めていくには、国民のみなさんの協力が不可欠です。米国の
元副大統領のアル・ゴア氏は「すべての答えは、バランスの中にある」と
言っています。バランスの中でエネルギー問題の答えを、しっかりと出して
いきたいと思います。

(2)基調講演1
「電気料金のジレンマ」
  勝間 和代氏
    勝間 和代氏
勝間 和代氏 経済評論家、中央大学ビジネススクール客員教授

「安全な原子力の実現を」
 エネルギーは生きる力で、経済成長の源。それを今、輸入に頼り切って
いる。1日約100億円の石炭、ガスを文字通り燃やしている。本当は、将来、
設備投資や人件費に必要なお金で、この影響は5年、10年たって表れてくる
だろう。
 「原油価格が下がったから大丈夫」という声もあるが、原油価格は変動の
リスクがある。CO2の削減からも、化石燃料の使い過ぎはやめるべきだ。
50年後、100年後の日本のことを考えなくてはいけない。
 「今、足りているからいい」と言う人もいるが、決してそんなことはなく、かつかつの状態だ。
再生可能エネルギーを含めて、どうしたら持続できるかを考えなくてはならない。
 原子力にはリスクもあるが、再生可能エネルギーのリスクもよくわかっていない。安全な原子力
発電を実現して、リスク全体を減らせるのではないかと思う。火力発電には、戦争や気候変動リスク
も伴う。そういったリスクに向き合ってバランスをとらなくてはならない。

(3)基調講演2
「経済安全保障とエネルギーミックス」
  市川 眞一氏
    市川 眞一氏
市川 眞一氏 クレディ・スイス証券チーフ・マーケット・ストラテジスト

「エネルギーの自衛力を」
 今、火力発電は日本の全電源のうちの88%に上っている。石炭であろうが
石油、液化天然ガス(LNG)であろうが燃やすことは同じでCO2の排出量は
増えている。地球温暖化抑止の観点からいえば、避けなければならない。
化石燃料の使用は可能な限り縮小しなければならない。
 安全保障の問題もある。石油やLNGが日本に輸入されるとき、どこを通る
のか。今まさに中東と並んで最もホットな地域と呼ばれる南シナ海、南沙諸島、西沙諸島の
あたりだ。もしかしたら、中国の軍事基地になってしまうかもしない場所、そこを石油や石炭、
LNGを運ぶタンカーが航行してくる。もし、ここでタンカーの航行を止められたら、日本の経済は
ストップしてしまう。それくらい危険な状態にある。原子力や再生可能エネルギーを含め、日本は
自前のエネルギーを確保しておかなくてはならない。そして、燃料を輸入する国を多様化しなければ
ならない。エネルギーの面でも「抑止力」をもつことが大切だ。

(4)基調講演3
「3E+Sの実現に向けたエネルギーミックス」
  吉野 恭司
    吉野 恭司
吉野 恭司  経済産業省資源エネルギー政策統括調整官

「安全、安心なバランスを」
 原発停止による平成26年の発電用燃料の負担は3.4兆円、貿易収支は
14.5兆円の悪化、家庭の電気料金はすでに2割以上増加している。
エネルギー自給率は2013年時点で6.2%。OECD (経済協力開発機構)
34カ国中下から2番目という厳しい状況になっている。
 平成25年度にはエネルギー起源のCO2排出量も、過去最高となった。
自給率、安定供給、コスト、CO2・・・。いずれの点でもバランスを欠いた状況になっている。
 こうしたなか、政府は、安定供給(Energy Security)、経済効率性の向上(Economic 
Efficiency)、環境(Environment)と安全性(Safety)の「3E+S」の視点から、長期エネルギー
需給見通しを策定。42年には、電源構成で12.2%(26年度実績)の再生可能エネルギーを22~24%
にまで高め、原発については火力発電所の効率化などによって依存度を低減させ、20~22%とする
大きな方向性を提示し、実現に向けた取り組みを進めている。

OECDの諸国の一次エネルギー自給率比較(2013年)


(5)パネルディスカッション
「化石、再エネ、原子力エネルギーのベストミックスの実現に向けて」
  開沼  博氏
     開沼  博氏
〔パネリスト〕
開沼  博氏 福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員
勝間 和代氏 経済評論家、中央大学ビジネススクール客員教授
市川 眞一氏 クレディ・スイス証券チーフ・マーケット・ストラテジスト
吉野 恭司  経済産業省資源エネルギー政策統括調整官
〔コーディネーター〕
むかい さとこ氏 フリーアナウンサー

「火力依存のリスクを解消 バランスよい組み合わせを」
──火力発電への依存度がかつてなく高まっている。化石燃料に依存することの影響について
勝間 第一に電気料金が上がること。支払ったお金が国外に流出し、日本人に還元されないところが問題で、大変なマイナス。原子力発電などの場合、国内にお金がとどまり、それが雇用など、
さまざまなところに回っていく。

電気料金の推移

市川 1973年(昭和48年)に第四次中東戦争が起こり、日本は石油危機になった。子供のころ、
母がトイレットペーパーにダッシュして奪い合いをしていたシーンが今でも忘れられない。一つの
燃料に依存する社会では、あんなことが起こってしまう。バランスをいかに考えていくかが、
極めて大事だ。

開沼 CO2削減について、震災後にあまり聞かれなくなったが、問題が無くなったわけではない。
むしろ状況は悪化している。CO2削減をいかに達成するか、原発への立場を超えて是々非々で
議論をすべきだ。改めてこの問題に正面から向き合う必要がある。

吉野 とはいえ、化石燃料は重要で、政府が策定した長期エネルギー需給見通しの目標値の通り
将来的に、原子力と再生エネルギーを足しても44%であり、56%は火力になる。いかに安く、
安定的に確保するのかということが大事だ。


広野駅

──原子力についてどのように進めるべきか
開沼 まずは信頼回復が必要。信頼なくして議論の混乱は収まらない。一方、住民側も合意形成を
諦めずに、冷静な議論を継続していくことが重要だ。

勝間 福島第一原発の場合、東北でエネルギーを作り、それを使うのが東京電力管内の消費者という
ふうに、生産と消費の現場が離れていることで、電気の利用者が自分のこととして考えられなかった
というようなことはなかったか。そうした分離についても考えていかなければならない。

市川 2030年、そして40年になっても、再生エネルギーの利用やCO2排出の削減など、課題の
何割かが解決しないことがあれば、原子力という技術を維持し、成長させていくことが大事だ。


──国の立場からは
吉野 「今、原子力発電所が動いていなくても、停電していないじゃないか」という声も聞く。
しかし、今はぎりぎりの状況で電力供給をしている状態。コストは上がり、CO2は過去最大の
排出量になっている。こういう状況はなるべく早く解消されるべきではないか。



パネルディスカッション
資源エネルギー庁